きみこいし

両親死別・未成年遺児のグリーフワーク体験記

期間限定「死別体験を哲学する会」
毎週土曜14:00-16:00 川崎にて開催中

きみこいし
since 2018.5.2 C. Hiro Meguro.
【告知】2018年8月17日(金)20:00
新宿Cafeラヴォア【イラスト交流会】
漫画家が教える!初心者OK!絵・イラスト好き
興味有・創作仲間作り・想いや心の中を形に・上達技術
詳しい人から話を聞いて知識を深めたり
おしゃべりを楽しむ会
申し込みはこちらから【お茶友の会
画材はコピックと色鉛筆を持っていきます。
わからないことがあれば聞いてください。
当日は宜しくお願いします!

亡き母を恨む・1 (全4回)

母親に思うこと。暮らした年月が少ないってのがコンプレックスだった。
一緒に撮った写真は幼い自分と若い母親。お母さん。どれだけそう呼んだかな。

病院には1年近く入退院を繰り返す。私が2歳の頃、母の家は病院だった。
会えない時期が長く続いた。母も寂しかっただろうな。だから諦めもつく。
仕方がなかった。母親に罪はない。

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当時は覚えていないことが大半だ。体験も感情も。そんなの自分でわかってる。
けれどわかっていない。自覚しているから悔しい。他人の言葉が拍車をかける。

三者目線。子供が覚えているわけがない。大人目線は上から目線に聞こえた。
決めつけられるから憎々しい。お前に何がわかる。漫画でもよくあるセリフ。
だから使いたくない。それでも悪態を吐く。心の中で何度だってそいつを殺す。
やがて怒りが爆発する。そいつに見立てて虫を捕まえる。

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夏。天井から垂れたガムテームを見上げる。とても古い記憶だ。
ハエとり紙にくっついた蠅を一匹摘み、定規を押し当てる。じっくり潰す。
みちみち、ぷちっ。じじじ。みちち、じじっ、みちっ、じっ。じっ。じっ。じ、
ペタンコになった蠅の足を一本づつ捥いでいく。羽を一枚づつ毟っていく。
息絶える様子を見届けたい。単純に不思議だった。生き物ってなんだ。
どこまで動ける。知りたい。それをしている間は辛くない。楽しい。
寂しさを埋めるための行為はいろいろなものへ興味を持つことだった。

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だから絵を描いた。BSのアニメを見て、いろんな漫画も読んだ。
小学2年の頃。母親を喪った猫の漫画を読んで泣いた。私は漫画に救われた。
虫を潰す癖も絵を描くことで次第にやらなくなっていた。

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早すぎる乳離れは健康を害する。心も体もおかしくなる。
寝る時間が1年ごとに1時間減っていく。小5のときには深夜3時を過ぎていた。
勉強もできない。わからない。やる気も起きない。つまらない。
そうじゃない。もうついていけない。

絵を描くことの方がずっと楽しくて、ずっとずっと幸せだった。
それでも勉強ができないことにコンプレックスを持っていた。幸せなんてない。

走るのも遅い。運動もできない。太った自分。152センチ、56キロ。
数値は普通なのに体が重い。むくんだ身体。排便も悪い。食生活も良くない。
中途半端だ。人間関係も全部が上手くいかない。悪い方へと流れていった。

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幸い父親が自分も学校を中退していたからか勉強を求めることはしなかった。
最初だけうるさく言っていたけれどすぐに諦めてくれた。
もしあのままスパルタだったらどうなってたのかな。父親は子育てに不向きだ。

いつも思ってた。お母さんがいてくれたらな。感情を押し殺して泣いた。
助けが欲しかった。でも隣には祖母がいた。大好きだった。安心した。

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好きなものを見つけられてよかった。
安心できる環境が残されていたから絵を描くことも好きになれた。
でも父には見せたくなかった。隠れた。そしてこっそり母の写真を模写した。
ウエディングドレスを着た母親が遺影の中で静かに微笑む。なにこの冠婚葬祭。
ふふってなったね。テレビもつけずに無音の中でひたすら描く。幸せだった。
でも本当に欲しかったのは母親だ。紙の上じゃ意味がない。ペンを置く。
母親が欲しい。恋しい逢いたい、でも逢えない。もうどこにもいない。虚しい。
私が強く抱いた恨みの感情は母親から世間に移った。
世間に怒りを持つことで母親は悪くないと美化をしていた。
母親は綺麗な存在として私の心に残った。